以前、ヨーロッパ出身の方と面談した際、「なぜ日本では転職回数が多いことをそこまで気にするのか」と聞かれたことがあります。
この質問はかなり本質的です。国や企業によって転職に対する価値観は違いますし、転職回数が多いこと自体が能力の低さを意味するわけではありません。
ただ、日本企業の中途採用では、転職回数や短期離職を見て「入社してもまた短期間で辞めないか」を確認するケースがあります。採用人事・転職エージェントの両方を経験した立場から、その背景と伝え方を整理します。
転職回数が多い=悪い、ではない
まず大前提として、転職回数だけで候補者の良し悪しは決まりません。
転職を重ねながら専門性を高めている人もいます。役割や責任範囲が広がっている、同じ職種でスキルを積み上げている、転職理由に一貫性がある場合は、回数が多くても評価されることがあります。
逆に、回数が少なくても応募ポジションとの経験が合わなければ、当然選考は通りません。
それでも日本企業が転職回数を気にする理由
企業側が気にしているのは「転職した事実」より、同じことが入社後にも起きる可能性です。
採用・育成にコストがかかるから
中途採用では、求人掲載やエージェント利用だけでなく、面接に関わる社員の時間、入社後の研修、現場での引き継ぎなどさまざまなコストが発生します。
そのため短期間での退職が何度も続いていると、採用側は「今回も早期離職になる可能性はないか」と慎重になります。
退職理由に再現性がないか確認したいから
たとえば毎回「上司と合わなかった」「仕事内容が思っていたものと違った」という理由で短期離職している場合、企業は入社後にも同じことが起きないかを確認します。
ここで重要なのは、過去の会社を悪く言わないことではありません。過去の経験から何を学び、次の会社選びでは何を確認するようになったかまで説明できることです。
海外での感覚をそのまま日本の面接に持ち込むとズレることがある
転職を前向きなキャリア選択として捉える文化や企業は当然あります。一方、日本企業の採用では長期的に働けるかを確認する会社もあります。
そのため、海外では自然だった転職理由でも、日本の面接では「なぜそのタイミングで辞めたのか」「次はなぜ長く働けるのか」まで説明を求められることがあります。
これは「外国人だから不利」という話ではありません。企業側が持っている採用リスクへの見方を理解し、その不安に答えられるようにしておくことが大切です。
外国籍の方が転職回数を説明するときの3つのポイント
1. 各転職の目的をつなげる
会社ごとの退職理由をバラバラに説明するより、「何を身につけたくて転職し、結果としてどんな経験が積み上がったか」を一本のキャリアとして説明します。
2. 次の会社で長く働ける理由を伝える
企業が知りたいのは過去だけではありません。「今回は何を確認して会社を選んでいるか」「どんな環境なら長く働けると理解しているか」まで話せると、定着への不安を減らしやすくなります。
3. 年収アップだけで終わらせない
年収を上げたいこと自体は自然です。ただ、それだけだと「より高い条件が出たらまた辞めるのでは」と見られる可能性があります。
仕事内容、専門性、役割、日本での中長期的なキャリアなどと合わせて説明した方が納得感は出ます。
NG例と改善例
NG例:
「もっと良い条件の会社があったので転職しました。前の会社も自分に合わなかったので辞めました。」
これだけだと、採用側には「今回も条件や環境が少し合わなければ辞めるのでは」という不安が残ります。
改善例:
「これまでの転職では、開発経験を広げることや上流工程に挑戦することを目的に会社を選んできました。一方で、転職を重ねる中で、自分が長く働くには仕事内容だけでなく、チームでの役割や今後身につけたい専門性との一致が重要だと理解しました。今回はその点を確認したうえで、長期的に経験を積める会社を選びたいと考えています。」
大切なのは、きれいな言葉にすることではなく、転職を通じて自分のキャリア選びがどう変わったかを説明することです。
エージェント側は企業へどう補足するのか
転職回数が多い候補者を企業へ推薦するとき、エージェント側も回数だけを見て説明するわけではありません。
「各社の退職理由に一貫性がある」「今回の転職軸が明確」「現職ではできない○○に挑戦したい」「本人が長期就業に必要な条件を理解している」といった情報があれば、企業側の懸念を補足できます。
逆に、本人から転職理由を聞いても毎回説明が変わる場合は、企業へ推薦する側も説明しづらくなります。面接対策のためだけでなく、自分自身の転職軸を整理しておくことが重要です。
転職は逃げとも挑戦とも一律には決められない
「転職=逃げ」でも「転職=必ず挑戦」でもありません。
大切なのは、その転職によって何を変えたいのか、その選択が次のキャリアにつながっているのかです。合わない環境で無理に働き続ける必要はありませんが、転職すればすべて解決するわけでもありません。
自分が長く働くために必要な条件を理解し、次の会社選びに反映できているなら、過去の転職経験はむしろ説得力のある材料になります。
まとめ
日本企業では、転職回数が多い候補者に対して定着性を確認するケースがあります。ただし、回数だけで採否が決まるわけではありません。
採用側が確認したいのは、「なぜ転職したのか」「各転職にどんな一貫性があるのか」「今回はなぜ長く働けるのか」です。
転職回数を隠したり、無理にポジティブな話へ変えたりする必要はありません。過去の経験から何を学び、次の会社選びにどう生かしているかを自分の言葉で説明できる状態を作っておきましょう。