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「自分はもっと年収をもらえるべきだと思っています」

「上司のマネジメントが悪くて、自分の能力を発揮できませんでした」

「あの人さえいなければ、もっと成果を出せたんです」

転職理由を聞いていると、こうした話を耳にすることがあります。もちろん、本当に会社や上司に問題があったケースもあります。不満を持つこと自体が悪いわけではありません。

ただ、採用する側からすると、転職理由を説明することより「自分がいかに正しいか」を証明することに力が入っている人には警戒することがあります。

結局、転職理由が正しいかどうかと、その人を採用したいかどうかは別の話だからです。採用人事とIT職種に特化した転職エージェントの両方を経験した視点から、面接官が何を気にしているのか、どう説明すればよいのかを掘り下げます。

転職理由を正当化する人が面接でマイナス評価になりやすい理由

企業側が知りたいのは、応募者の前職にどちらの非があったか、ではありません。入社後に成果を出せそうか。周囲と協力できそうか。次の会社でも同じ理由で辞める可能性はないか。そこを考えています。

ところが本人は、前職がいかにおかしい会社だったか、自分がいかに不当な扱いを受けたかを延々と説明してしまう。話が上手く、筋も通っている。でも、聞いている面接官が考えるのは「うちで同じことが起きたら、この人はどう振る舞うだろう」ということです。

本人は自分の正しさを証明しているつもりでも、面接官には一緒に働くリスクを説明してしまっている。このすれ違いが起きます。

もちろん、転職理由を説明すること自体が悪いわけではありません。「正当化すること」が目的になり、入社後の話が見えなくなることが問題なのです。企業の判断軸については、関連記事の転職理由で企業が見ている「攻め」と「守り」でも詳しく解説しています。

「僕はもっと年収をもらえるべき」だけでは採用理由にならない

例えば「現職は自分を正当に評価していない」という転職理由。では、なぜもっと高い年収にふさわしいと思うのでしょうか。

「同年代より仕事ができる」「これだけ頑張っている」「会社が能力を理解していない」。気持ちはわかります。ただ、それだけでは採用側の判断材料として足りません。

企業が確認したいのは、任された役割、実際の成果、成果を出した過程、入社後にその強みを再現できるか。そして、希望年収が自社で期待する役割と合っているかです。

痛い話ですが、面接は前職との争いの勝敗を決める場所ではありません。あなたが不当に扱われたかどうかを裁くために面接官がいるわけではないのです。

他責思考の人は「事実」と「自分の解釈」が混ざりやすい

もう一つ、採用側が気になるのが事実と解釈を混同する話し方です。

「上司が自分の提案を採用しなかった」。これは確認できる出来事です。しかし、そこから「上司は自分を嫌っている」「この会社は優秀な人を評価しない」「だから自分は活躍できなかった」と話が発展すると、気になります。

提案が通らなかった理由は、予算や優先順位かもしれない。内容に改善余地があったかもしれない。もちろん上司側の判断が悪かった可能性もあります。本人だけの話では、どれが正しいかは決められません。

断片的な事実を、自分に都合のよい想像で埋め、それっぽい論理で説明する。説明が整っているほど、本人は自分の解釈を事実だと思い込みやすい場合があります。

面接官が見ているのは、意見が合わないときに別の可能性を考えられるか、自分の認識を修正できるかという点です。

頭の良い「論理的な他責思考」が厄介な理由

他責思考というと、感情的で文句ばかり言う人を想像するかもしれません。でも、より見極めにくいのは、頭が良くて説明の上手い人です。

会社や上司の問題点を的確に批判できる。相手を納得させる論理も持っている。指摘自体が正しいことさえあります。

ところが、その思考が自分自身には向いていない。

  • 会社の課題は詳しく分析できるのに、自分の改善点については語れない。
  • 上司の判断ミスは指摘できるのに、自分の伝え方を振り返らない。
  • 周囲に高い水準を求める一方、自分が周囲にどう映っているかは考えない。

論理的な人と客観的な人は違います。筋が通っていることと、その筋道の出発点が正しいことは別です。

頭の良さを問題解決ではなく、自分が正しいと証明することに使ってしまう。採用担当者は、ここに危うさを感じます。

企業が恐れるのは「正論で組織を壊す人」

仕事ができる人でも、採用をためらうことはあります。なぜか。企業は個人の能力だけでなく、チーム全体への影響も見ているからです。

方針が気に入らなければ正論で批判する。評価に納得できなければ制度の問題を指摘する。人間関係がうまくいかなければ相手の能力不足として説明する。ひとつひとつの主張が間違っていないこともあるでしょう。

ただ、その正しさを振りかざすばかりで対話ができなければ、周囲が疲弊し、協力関係が崩れることがあります。優秀な人でも、結果的に組織全体の成果を下げてしまう可能性があるのです。

企業は採用コストも育成コストもかけて人を迎えます。「この人と一緒に働けるだろうか」「問題が起きたときに対話できるだろうか」と考えるのは自然なことです。

ただし、会社の問題を指摘する人=組織クラッシャーではありません。建設的に異論を伝えられる人は貴重です。危険なのは、自分の見方だけが正しいと思い込み、周囲の意見を受け取れなくなることだと思います。

面接で転職理由を聞かれる本当の意図とは?

面接官が転職理由を聞くのは、過去の不満を評価するためだけではありません。次に同じような問題が起きたとき、あなたがどう行動する人なのかを知るためでもあります。

「何が起きたのか」「そのとき自分は何をしたのか」「何が改善できなかったのか」「次の会社で何を大切にしたいのか」。これらがつながっていると、話に納得感が生まれます。

NG回答:相手の責任を説明して終わる

「上司のせいで自分の提案が通らず、仕事ができませんでした。次は正当に評価してもらえる会社に行きたいです」

これだけだと、実際に何が起き、本人が何を試し、次はどんな環境なら活躍できるのかが分かりません。

改善回答:事実・行動・次の転職軸を伝える

「上司と方針が合わず、提案が採用されないことが続きました。自分から目的や優先順位を確認する機会を設けましたが、十分な改善には至りませんでした。振り返ると、もっと早く関係者を巻き込む余地もあったと思います。次は、意思決定の背景を共有しながら建設的に議論できる環境で力を発揮したいと考えています」

これは例文なので、実際にしていない行動を盛り込んではいけません。自分が悪くなかったケースでも、事実と、自分が試したことと、今後の希望を整理して話せば十分です。

面接全体で評価されるポイントは、書類は通るのに面接で落ちる人の原因も参考にしてください。

転職エージェントも、他責だけの転職理由は企業へ推薦しづらい

転職エージェントは、本人の希望を聞くだけでなく、企業に「なぜこの人を推薦するのか」を説明する立場でもあります。

「この方は会社に問題があると強く主張しています」だけでは推薦材料として弱い。企業からすると、同じ状況が自社でも起こらないか心配になるからです。

一方で、現職での役割、成果、解決を試みたこと、次の会社で実現したいことが一貫していれば説明しやすくなります。本人が長く働くための条件を理解していることも、安心材料になります。

エージェント側としても「前職の悪口を言わないでください」と表面的な話し方だけを直すのではなく、本人が本当に何に困り、何を変えたいのかを整理することが大切だと考えています。

他責にならないことは、理不尽を我慢することではない

ここは誤解してほしくありません。ハラスメントや長時間労働、合意した条件と違う働き方など、本人の努力だけでは解決しない問題もあります。そうした職場を離れる決断まで「他責」と切り捨てるべきではありません。

自分が悪くないのに無理やり反省を口にする必要もない。面接では、話せる範囲で事実を整理し、なぜ環境を変える必要があったのかを説明すればよいと思います。

企業側も、一度の面接発言だけで応募者の人柄を決めつけるのではなく、具体的な事実と行動を確認すべきでしょう。

まとめ:自分の正しさを証明するより、客観視できる人になろう

自分の考えを持つことは大切です。ただし、自分の考えを持つことと、自分の考えだけが正しいと思い込むことは違います。

転職理由を話す前に、一度振り返ってみてください。

  • それは確認できる事実か、自分の解釈か。
  • 相手の立場から見ると、別の説明があり得ないか。
  • 自分ではどんな働きかけをしたか。
  • 次の会社では、どう働きたいのか。

採用面接は、自分の正しさを認めてもらう場所ではありません。「この人と一緒に働きたい」と思ってもらえるかどうかが大切です。

正論を言えることと、信頼されることは、まったく別の能力なのです。

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